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怖い話芸人のダイノジ大谷が、稲川淳二の超こわい話からBest5をピックアップ!背筋も凍るような恐怖体験をお届けします・・・

ダイノジ大谷の「ワンポイントえぇ怪談」

実はこれ、ぼくが一番パクりたい怪談です。この話を稲川さんが語ると、感覚的に訴える「イヤな感じ」や「怖さ」が、肌に触れるようにまざまざと伝わってくる。おかしな推薦になりますが、怪談で人を怖がらせたい人はこの怪談を教科書にすると最適だと思います。

中古車

早速車に乗って、ブオ、ブオ、ブオオオ
と走った。こら、気持ちがいい。

エンジンを心地よく轟かしてね、市街地をプーッと走り抜けていくわけだ。

ブーーー

やがてやってくると、これ郊外なんですが、まだ雪が随分残っているんで、さあ行ってみよう。
四輪駆動ですよね。

それで雪の上ブーーーと走る。

4つのタイヤがこの雪の路面をね、カーッとくらいついて気持ちよくカーッと回ってく。

「おお、さすがなもんだな」と思った。多少ハンドルに癖はあるんですがね、まあ、そんなことはどうでもいい。

今度は峠に向かう長い上り坂。これを一気にブーーーーと。

「おお、調子がいいなあ。」と思った。
「いや、こんないい車よく50万で売ってくれたな。」と思って、もう気持ちがいいもんですから、夢中でもって雪の中ブーーーーーと走っていた。

そうこうするうちに、県境を通り越しちゃったんです。
辺りがうっすら暗くなってきたんで、
「あ、あ、いけない。随分来ちゃったな。」と思った。

これはもう辺りも暗くなってきたし、急いで帰ろうと思ったんですね。

何しろ免許は取り立て、車はきょう初めて乗った車ですからね。おまけにこの雪の路面ですからね。慣れていないわけだ、そんなに。

で、これで暗くなったら、もうちょっと怖い。
じゃあ急いで帰ろうと思って、

フーーー

と帰り始めたの。

ナビゲーションは付けてある。

ブーーーーーッ

と。

辺りがだんだんだんだんと暗くなってくる。気持ちは焦るんですが。
「はてな」と思ったの。



もういくら何だって自分の見知ったこの町の景色が見えてもいい頃なんですが、一向にその景色が見えない。

「変だな、おい」

向こうに山が見えている。それは分かっているんですよね。位置からいって自分はもっと左のほうを走っているはずなんだ。

これ、方角違うな。

「どうもこのナビゲーションおかしいぞ」と思った。

で、ブーーーーンと走ってる。

「どうしようかな」と思いながら、不安な気持ちでもってブーーーンと走ってる。

辺りは雪の壁なんだ。ブーン。

前方にモヤが出てきたんで、
「しょうがねえな」とヘッドライトを点けたけど、ヘッドライトの灯りがモヤをこう突き刺すようにしてフーッと前方を照らしている。

ブーーーーーン

陽がだいぶかげってきた。

外が随分とこう寒くなってきた。温度が下がってきたんで、この路面がね、凍りついてくる。

ブーーーーンと。

やがてヘッドライトの灯りの先、その前方に交差点が見えてきた。

と言っても、これ建物があるわけじゃないんですよね。
交差点らしいんで、「あ、交差点だな」と思った。

車がどんどん近づいていくと、これ十字路じゃないんですよ、T字路なんですね。
右には行けない。まっすぐか左。まあ、自分は左行きたいもんですから、
「これでいいや」と思って、ブーーと行きながらフッと思った。

全く人がいないわけだ。
一面の雪なんで。
「じゃあここもね、スピードを落とさないで、そのまんま一気にガーッと曲がってみよう」と思って、

ブーーーーーーン

と曲がった。

車はすーっと曲がったんですが、何しろ気温が下がって路面が凍りついているもんですからね、そのままツーッと横滑りしたので、慌ててハンドルを切った。

ハンドルは切ったんですが、ちょうどハンドルを捉えて。そのまま向こうにある雪の壁、そこへ向かってブーーと車が滑っていく。

「ああー」

と思った。
ヘッドライトの灯りの中、雪の壁の中から、小さな子どもが両手を広げて
「来ちゃダメ」
って言っているのが見えて、
「いけねえ」
と思ってバーッと急ブレーキを踏んだ。

踏んだんです。
が、タイヤは止まったんですがね、車は勢いがついているからそんな雪の上を滑っていくわけですよね。

下はもうすっかり凍りついていますから、ツーッと滑って、雪の壁、ドンとぶつかった瞬間

グニャ

嫌な感触がしたんで
「うわ、ひいちまった」と思った。

その途端、雪の壁ん中から子どもの生首がボーンと飛び出してきて、車のボンネットはツーッと滑ってね、目の前のフロントに、バーンと音立ててぶち当たった。

「ウワー!」とA君の悲鳴が上がった。

それは血に染まった小さな女の子の生首なんですよね。
フロントウィンドウにグッとめり込んで、2つの目がじっとこっちを睨んでいる、

目をむいて、
こっちをじーっと見つめると、
「この車があたしをひいたんだ」
と言った。
「ひいっ」と、そのまま意識を失っちゃった。

それはわずかな時間なんですよね。

それで、フッと気がついて
「いけねえ」と思って見ると、なんとフロントウィンドウには石のお地蔵さんの頭がバーンとめり込んでいるわけだ。

「えっ?!」と思って飛び出した。

で、車の前に行って。雪の壁、爪でもって、かーっと雪をどかしていくと。
あら。雪の壁の中に石のお地蔵さんの胴体があるわけだ。車、それにぶつかっているんだ。
え、違う。自分、子どもをひいているわけだから、

「えっ?!」って。雪をね、かいてはみるんですが、子どもの姿がなけりゃ血も何もない。
えっ?!おかしい---- そんなはずはない。えええ。

と思っていると、あれっと思った、看板がある。何だろう。

で、雪をはらって見てみると、
「この場所で幼い女の子が車にひき殺されて、雪の中に捨てられて放置されていました。この女の子の魂を安らぐようにという祈り。それと交通事故をなくすための祈り。そういうことから、ここにお地蔵さんが建てられました」と書いてあった。

で、それを見て「あ、ちょっと待てよ。もしやその女の子をひき殺して雪の中に埋めて、そのまま逃げた犯人というのは」それって、もしかして---、と思った。それからまもなくして犯人が逮捕されたそうですよ。



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ダイノジ 大谷ノブ彦
生年月日:1972年 6月8日
血液型:B型
出身地:大分県 佐伯市
趣味・特技:ロックンロール/
育児/文章を書く/グルメ

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